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　ましてや今は名門成家の跡取りという立場まで付随してくるのだから、女どもがかしまくしなるはずである。
「急な来客でもあったとか？」
　試しに思いついたことを口にすると、二人の女中は気の毒なくらい狼狽えた。
「私どもは別に何も存じません」
　常なら光王に話しかけられただけで顔を紅くしてうつむく彼女たちである。なのに、今日はペコリと頭を下げて逃げるように去っていった。その態度は、これ以上、問いかけられるのは明らかに迷惑がっている。
　小走りに去ってゆく彼女たちを呆気に取られて見つめていると、向こうから執事が歩いてくる。
　この老執事は父真悦より数歳違いで、彼の父もまた成家の執事として忠勤を励んだという。悪い男ではないようではあるが、彼もまた光王をどこかで〝成り上がり者の庶子〟だと一歩退いているのは明白だ。