月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第23章 揺れる心
「言え、言わないなら、その皺首をへし折るぞ」
首根っこを掴んだ手にわずかに力を込めただけで、執事は情けなくも泣きそうな表情で悲鳴を上げた。
「は、放し―、お放し下さいよ。若さま。私は不肖ながら、こちらの旦那さまがご幼少の砌、父の代からご当家に―」
まるで処刑される寸前の生命乞いのように呻く彼から光王の手が呆気なく放れた。執事はその場にぺたりと座り込み、気が抜けたように虚ろな眼で宙を見ている。
「お前が父上(アボニン)の子どもの頃を知っているからと言って、それがどうかしたか? ぽっと出の俺には所詮、拘わり合いのないことだ。そうだな、俺が家督を継いだ暁には、年寄りはさっさと追い出して、若くて働きの良い召使いを入れるのも良いかもしれないな」
むろん、はったりである。小心ではあるが、根は善良なこの男をたったそれだけで首にするつもりは毛頭ない。
首根っこを掴んだ手にわずかに力を込めただけで、執事は情けなくも泣きそうな表情で悲鳴を上げた。
「は、放し―、お放し下さいよ。若さま。私は不肖ながら、こちらの旦那さまがご幼少の砌、父の代からご当家に―」
まるで処刑される寸前の生命乞いのように呻く彼から光王の手が呆気なく放れた。執事はその場にぺたりと座り込み、気が抜けたように虚ろな眼で宙を見ている。
「お前が父上(アボニン)の子どもの頃を知っているからと言って、それがどうかしたか? ぽっと出の俺には所詮、拘わり合いのないことだ。そうだな、俺が家督を継いだ暁には、年寄りはさっさと追い出して、若くて働きの良い召使いを入れるのも良いかもしれないな」
むろん、はったりである。小心ではあるが、根は善良なこの男をたったそれだけで首にするつもりは毛頭ない。