
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第23章 揺れる心
なのに、ちゃんとした妻のいる男の許に、更に新たに〝妻〟を送り込んでくる妙鈴の神経が知れない。
苛立つ気持ちを無理に鎮めるようにわざとゆっくり時間をかけて歩き、香花の部屋の前に立った。
耳を澄ませると、人の気配がする。もっと静けさに馴れると、かすかに聞こえてくるのがすすり泣きだと判った。
畜生!
光王は内心で毒づき、酷い罵声の言葉を妙鈴に上げ、廊下へと続く階(きざはし)を駆け上る。急いで両開きの扉を開けた。
突然現れた良人に、打ち伏していた香花の肩がピクリと震える。弾かれたように面を上げた妻の眼に宿った涙を彼は見落とさなかった。冴え冴えとした黒い瞳に雫が露のようにきらめいている。
苛立つ気持ちを無理に鎮めるようにわざとゆっくり時間をかけて歩き、香花の部屋の前に立った。
耳を澄ませると、人の気配がする。もっと静けさに馴れると、かすかに聞こえてくるのがすすり泣きだと判った。
畜生!
光王は内心で毒づき、酷い罵声の言葉を妙鈴に上げ、廊下へと続く階(きざはし)を駆け上る。急いで両開きの扉を開けた。
突然現れた良人に、打ち伏していた香花の肩がピクリと震える。弾かれたように面を上げた妻の眼に宿った涙を彼は見落とさなかった。冴え冴えとした黒い瞳に雫が露のようにきらめいている。
