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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第24章 交錯する想い

   交錯する想い
 
 香花は小さな欠伸を噛み殺し、慌てて周囲を窺った。人気がないのを確かめ、漸く吐息を洩らす。
 かれこれもう一刻以上も大量の洗濯物と格闘しているのだけれど、なかなかはかどらない。
 昨夜もまた、朝方まで光王に幾度も抱かれ、情事の気だるさが身体のそこここに残っている。勉学に励む彼の傍らで繕い物をしていたら、いつのまにか、押し倒されていた。もう、毎度のことだ。
 光王の将来を本気で思うなら、妙鈴の言うように当分は褥を共にしない方が良いのかもしれないとさえ思う。もっとも、一日中、女中と変わらないほど仕事に追い回される香花であってみれば、光王と二人だけになれるのは夜しかない。もし夜も離れ離れになったら、本当に光王とは逢う機会がなくなってしまう。それは、あまりに辛い。

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