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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第23章 揺れる心

 母はあの世で、この顛末をどう思っているだろう? 二十九年前の罪を今更暴き立て、恨み辛みを口にしたところで、かえって自分や光王の方が空しくなるばかりだと嘆いているのではないだろうか。
 だが、言わずにはいられなかった。母だけでなく、今度は愛する女―香花までをも追いつめようとする義母が憎くてならなかったのだ。
「お袋(オモニ)」
 光王は呟くと、不覚にも湧いてきた涙を手のひらでこすった。

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