月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第24章 交錯する想い
涙が後から後から堰を切ったように溢れてくる。
香花は妙鈴の部屋を辞去した後、例の井戸端にいた。泣くだけ泣いた後は、しばらくボウとあらぬ方を見つめていた。
今日も冬珊瑚の実は艶やかな実をたくさんつけている。香花はどこか虚ろな瞳で鮮やかな橙の実を眺めてから、のろのろと立ち上がり、井戸の傍に行った。井桁に手をかけて、中を覗き込んでみる。
と、ふと女中仲間たちが話していたのを思い出した。
何代か前、やはり成家に仕えていた若い女中が当主に手籠めにされた。彼女には互いに慕い合い、将来を誓い合った男がいた。女は男に申し訳ないと辱められた我が身を恥じ、自ら井戸に身を投げてしまう。丁度、その夜は満月だった。
香花は妙鈴の部屋を辞去した後、例の井戸端にいた。泣くだけ泣いた後は、しばらくボウとあらぬ方を見つめていた。
今日も冬珊瑚の実は艶やかな実をたくさんつけている。香花はどこか虚ろな瞳で鮮やかな橙の実を眺めてから、のろのろと立ち上がり、井戸の傍に行った。井桁に手をかけて、中を覗き込んでみる。
と、ふと女中仲間たちが話していたのを思い出した。
何代か前、やはり成家に仕えていた若い女中が当主に手籠めにされた。彼女には互いに慕い合い、将来を誓い合った男がいた。女は男に申し訳ないと辱められた我が身を恥じ、自ら井戸に身を投げてしまう。丁度、その夜は満月だった。