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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第24章 交錯する想い

 けれど、その一方で、妙鈴がこれを知れば、一体、どのような反応を見せるだろうかと不安になる。妙鈴は、光王はむろん、香花も嫌っている―どころか烈しく憎悪しているのだ。そんな状態で香花が懐妊したとして、真悦のように歓ぶとは到底思えない。
 迂闊だったと思う。漢陽に戻ってきてから、まだ月のものが一度もないことを重大だとも思わずにいたのだ。香花にとっては初めての体験だが、間違いはないだろう。これまで香花の月のめぐりは至って順調で、まず遅れたことはない。
 以前、叔母香丹の息子尚賢の妻が懐妊したばかりの頃、今の香花のように悪阻に苦しんでいた。妊娠初期に特有の症状だが、胎児が成長して五月(いつつき)から六月(むつき)になれば、自然に治まるらしい。
 現に、尚賢の妻もお腹が少し目立ち始める頃には、寝込むほどひどかった悪阻も嘘のように治まり、かえって太りすぎを気にしなければならないほどの旺盛な食欲を見せたものだ。

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