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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

 そう言っておいてから、ふと〝あんた、ところで幾つ?〟と問うてくる。
「十七です」
 と、応えれば、女将は額を押さえて呻いた。
「そりゃあ、十分にあたししゃ、おっかさんだねえ」
 言葉とは相反して、女将の表情は一点の曇りもない晴れやかなものだった。まるで、憑きものが落ちたような、清々しい表情が印象的だった。
「いいよ、こうなりゃ乗りかけた舟だ、力を貸してやろうじゃないか。あんたの好きなだけ、ここにいると良い」
 そこまで言って、思い出したように笑い。
「光王にも少し心配させてやった方が良い。良いかい、男ってのは、どういうわけか一度手に入れた女は粗略に扱っても良いと思うんだ。それまで眼の色変えて、追っかけてたことなんか忘れたように、今度は別の女に夢中になる。

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