
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第25章 岐路(みち)
どうしてここが判ったの? そう問おうとしたのだが、その応えは意外なところから返ってきた。
「あたしが知らせたんだよ」
女将の静かすぎる声がやけに大きく響いたような気がする。
彼女は酒肴の載った小卓を捧げ持ち、すべるように室に入ってきた。
「悪く思わないでおくれ」
女将は香花に微笑みかけると、改めて小卓を挟んで光王に向き直った。小卓の上の銚子を手に取り、二つある盃に酒を満たしていく。
「ま、一杯おやりよ」
光王は差し出された盃に顔をしかめた。
「悪いが、今はそんな気分じゃない」
「あら、勿体ない。昔のよしみで、あんたには特別に上等の酒を出してやったのにさ」
女将はからからと笑うと、自分がその盃をひと息に干した。流石は酒場の女将だけあって、見事な呑みっぷりだ。
「あたしが知らせたんだよ」
女将の静かすぎる声がやけに大きく響いたような気がする。
彼女は酒肴の載った小卓を捧げ持ち、すべるように室に入ってきた。
「悪く思わないでおくれ」
女将は香花に微笑みかけると、改めて小卓を挟んで光王に向き直った。小卓の上の銚子を手に取り、二つある盃に酒を満たしていく。
「ま、一杯おやりよ」
光王は差し出された盃に顔をしかめた。
「悪いが、今はそんな気分じゃない」
「あら、勿体ない。昔のよしみで、あんたには特別に上等の酒を出してやったのにさ」
女将はからからと笑うと、自分がその盃をひと息に干した。流石は酒場の女将だけあって、見事な呑みっぷりだ。
