テキストサイズ

月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

 香花が無意識に光王から身体を引いたのを見、光王がフと自嘲気味に笑った。 
「―これが、お前の応えなのか?」
「それは、どういう―こと?」
 辛うじて応えると、光王は皮肉げに口の端を引き上げた。
「お前がそれを訊くのか?」
 抑揚のない声は、それだけで彼の凄まじい怒りを物語っている。
「俺が嫌で、逃げ出したんだろう? 俺なんかのために、あの家にいるのが嫌で、出ていったんだろうが!」
 最後の部分は殆ど怒声に近かった。
 香花が思わずピクリと身体を震わせると、光王の眼がふっと細められた。その瞳の奥底に潜むものが何なのか、今の香花には皆目判らない。
「どうして、ここが―」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ