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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

「ああ、判ったよ。あんたがそんな冷血漢の情けないヤツだとは、これまでついぞ、あたしは知らなかったね。香花、こんな男、さっさと見限っちまいな。光王なんかの甲斐性なしにくっついてたって、余計な苦労するだけさ」
「何だと!」
 悄然としていた光王が突如、豹変したのには愕いた。激昂して今にも掴みかからんばかりだ。
 香花は弾かれたように顔を上げた。
 視線と視線がぶつかった。
 光王がじいっと自分を見つめている。
 まるで手負いの獣のような孤独な瞳が怯えたように香花に向けられていた。
「私、帰ります」
 言い切った香花に、女将が気遣うように訊ねる。
「本当に良いのかい?」

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