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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

「俺は―、香花がいないと駄目なんだ。香花の笑顔が見えなくなっただけで、ここのど真ん中にぽっかり大きな穴が空いちまったような、妙に空しい気分になっちまう」
 光王は自分の心臓の辺りを指で押さえた。
「お願いだ、香花。俺を嫌いになったとしても、構わない。俺の傍にいてくれ」
 俺はお前がいないと駄目なんだ。
 もう一度、振り絞るように呟く光王を目の当たりにし、香花はうつむいた。顔を上げていれば、溢れ出した涙を見られてしまうからだ。
「ああ、何てザマだ。それが〝天下の大義賊光王〟のなれの果てかい。〝光王〟もついにヤキが回ったね。みっともないったら、ありゃしない」
 女将はキッとした口調で言うと、傍らの香花を見た。

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