
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
香花が我が屋敷で辛い想いをしていると指摘された真悦は、頭を下げた。
「そのことについては、こちらとしても、真に心苦しい限りです。私が留守がちで、屋敷内のことは妻に任せきりなので」
と、言い訳めいたことを口にするしかない。それにしてもと、改めて露見した事実に感じ入っていると、峻烈の笑いを帯びた声が思考を中断させる。
「本当なら、このような難しい役、引き受けたくはないが、彼(か)のご婦人は我が妻とも懇意にしておりましてのう。妻に何とかしてやってくれと泣きつかれまして、まあ、四十年以上も連れ添ったよぼよぼの婆さんですが、儂が見てのとおりの頑固者でしょう。任官もせず好きなように生きてきたお陰で、若いときから苦労をさせた分、今でも頭が上がらんのです」
そう言うと、呵々大笑した。
「そのことについては、こちらとしても、真に心苦しい限りです。私が留守がちで、屋敷内のことは妻に任せきりなので」
と、言い訳めいたことを口にするしかない。それにしてもと、改めて露見した事実に感じ入っていると、峻烈の笑いを帯びた声が思考を中断させる。
「本当なら、このような難しい役、引き受けたくはないが、彼(か)のご婦人は我が妻とも懇意にしておりましてのう。妻に何とかしてやってくれと泣きつかれまして、まあ、四十年以上も連れ添ったよぼよぼの婆さんですが、儂が見てのとおりの頑固者でしょう。任官もせず好きなように生きてきたお陰で、若いときから苦労をさせた分、今でも頭が上がらんのです」
そう言うと、呵々大笑した。
