
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
香花の気性も、そんな慎ましく思慮深い叔母ゆずりなのかもしれない。
「成氏と申せば、都でも名を知られた名家、しかも現当主のあなたは礼曹参知の要職を務め、いずれは参判、判書まで上られるお方と専らの噂です。更に、国王(チユサン)殿下(チヨナー)の信頼も厚い。そのようなお方の許に今になって叔母として名乗り出て、あの娘が金氏の唯一の後継者だと明かせば、何か魂胆でもあるのかと余計な詮索をされるのではないかと、あれの叔母は心配したのです。それゆえ、儂の許をわざわざ訪ねてきて、香花の叔母が成家との橋渡し役を頼んだのです。香花がご当家に入った初めは、さして力もない家門の一族であることをご当家に伝えれば、成家とは釣り合わぬと心証を悪くされるのではと名乗るのを控えていたようですが、かえって、それが仇になってしまい、辛い想いをしている香花が不憫だと泣いておりました」
「成氏と申せば、都でも名を知られた名家、しかも現当主のあなたは礼曹参知の要職を務め、いずれは参判、判書まで上られるお方と専らの噂です。更に、国王(チユサン)殿下(チヨナー)の信頼も厚い。そのようなお方の許に今になって叔母として名乗り出て、あの娘が金氏の唯一の後継者だと明かせば、何か魂胆でもあるのかと余計な詮索をされるのではないかと、あれの叔母は心配したのです。それゆえ、儂の許をわざわざ訪ねてきて、香花の叔母が成家との橋渡し役を頼んだのです。香花がご当家に入った初めは、さして力もない家門の一族であることをご当家に伝えれば、成家とは釣り合わぬと心証を悪くされるのではと名乗るのを控えていたようですが、かえって、それが仇になってしまい、辛い想いをしている香花が不憫だと泣いておりました」
