テキストサイズ

月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第26章 都の春

「さりながら、そなたの奥方は、どうやら香花をあまりお気に入られぬと聞くが?」
「妻は、私が説得します。気の強い女ではありますが、愚かではございませぬ。恐らく私の言うことを理解してくれるものと信じております」
 真悦が律儀に言うのに、峻烈はニッと笑った。
「お互い、侮れぬ妻を持つと、辛いのう。恐妻家同士、これからもよろしく頼みますぞ」
「こちらそ、名高い先生とこうしてお逢いすることができ、友人たちにまたとない自慢話ができますよ」
 真面目な顔で冗談を言う真悦を見て、峻烈は声を上げて愉快そうに笑った。

 真悦は折角だからと峻烈に食事と酒を勧めのだが、結局、彼は〝帰りが遅くなると、また妻に叱られますでのう〟と言い、早々に帰っていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ