
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
その夜、妙鈴は良人の居室まで薬湯を運んだ。
このところ、真悦は時折、頭痛がすると零す。結婚してかれこれ二十八年の間、我慢強い良人が体調の悪さを訴えるのは初めてのことだ。医者に診せても、特に問題になるところはなく、過労だろうと言う。
良人の健康を案じた妙鈴は、高価な薬湯を取り寄せ、朝夕の食事の後には必ず煎じて飲ませるようにしていた。
「旦那(ヨン)さま(ガン)。お薬を持って参りました」
廊下から声をかけて扉を開けると、丁度、真悦は机に向かって何やら書き物をしているところであった。
実は、その書状は香花の叔母香丹に宛てたものだった。峻烈からの要請を受け、真悦は、話はすべて張先生からお聞きしたゆえ、香花のことはご心配なきよう―としたためたのである。
このところ、真悦は時折、頭痛がすると零す。結婚してかれこれ二十八年の間、我慢強い良人が体調の悪さを訴えるのは初めてのことだ。医者に診せても、特に問題になるところはなく、過労だろうと言う。
良人の健康を案じた妙鈴は、高価な薬湯を取り寄せ、朝夕の食事の後には必ず煎じて飲ませるようにしていた。
「旦那(ヨン)さま(ガン)。お薬を持って参りました」
廊下から声をかけて扉を開けると、丁度、真悦は机に向かって何やら書き物をしているところであった。
実は、その書状は香花の叔母香丹に宛てたものだった。峻烈からの要請を受け、真悦は、話はすべて張先生からお聞きしたゆえ、香花のことはご心配なきよう―としたためたのである。
