
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
大粒の涙を零す香花に微笑みかけ、妙鈴は懐から手巾を出して、その涙を拭いてやった。
「これはまた、古びた指輪一つに大袈裟な物言いよの。香花、これからは美しい音楽に日々、耳を傾け、他人を妬まず憎まず、身を健やかに、心を平静に保つように心がけるのだぞ。さすれば、良き子が生まれよう。そなたが生む子はこの成家の跡取りゆえ、大切に育てるよう頼むぞ」
それが事実上、妙鈴が香花を〝嫁〟と認めた言葉となったことは言うまでもない。
幾度も頷きながら涙を流す香花を、妙鈴は穏やかまなざしで見つめていた。彼女の細い眼にくっきりと刻まれていた険は、もう、どこにも見当たらなかった。
突如として、香花が両手を組み、眼の高さに持ち上げた。そのまま座って深々と拝礼を行う。香花なりの、初めて自分を嫁だと呼んでくれた義母に対する心の表し方なのだ。
「これはまた、古びた指輪一つに大袈裟な物言いよの。香花、これからは美しい音楽に日々、耳を傾け、他人を妬まず憎まず、身を健やかに、心を平静に保つように心がけるのだぞ。さすれば、良き子が生まれよう。そなたが生む子はこの成家の跡取りゆえ、大切に育てるよう頼むぞ」
それが事実上、妙鈴が香花を〝嫁〟と認めた言葉となったことは言うまでもない。
幾度も頷きながら涙を流す香花を、妙鈴は穏やかまなざしで見つめていた。彼女の細い眼にくっきりと刻まれていた険は、もう、どこにも見当たらなかった。
突如として、香花が両手を組み、眼の高さに持ち上げた。そのまま座って深々と拝礼を行う。香花なりの、初めて自分を嫁だと呼んでくれた義母に対する心の表し方なのだ。
