
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
妙鈴は意外なことを言い、唖然としている香花にさりげなく小さな箱を渡した。
鮮やかなローズピンクの絹張りの箱である。妙鈴は自分でその箱の蓋を開け、中から指輪を取り出した。薄紅色の珊瑚の指輪を香花のほっそりとした指にはめてやる。
「これは私が婚礼を挙げた時、旦那さまより頂いたものだ。若い者には古びたつまらぬ品かもしれないが、私にとっては忘れ得ぬ想い出の品よ。いずれ息子に嫁が来たら与えようと大切にしまっていた。古いものだが、質の良い玉ゆえ、傷つけぬようにな」
「お義母上さま―」
香花は潤んだ瞳で妙鈴を見つめた。
〝いずれ息子に嫁が来たら与えようと―〟、そのひと言が心の奥底に触れ、優しい気持ちを呼びさましてゆく。
「ありがとうございます。お義母上さまの大切なお品、生命に代えても大切にいたします」
鮮やかなローズピンクの絹張りの箱である。妙鈴は自分でその箱の蓋を開け、中から指輪を取り出した。薄紅色の珊瑚の指輪を香花のほっそりとした指にはめてやる。
「これは私が婚礼を挙げた時、旦那さまより頂いたものだ。若い者には古びたつまらぬ品かもしれないが、私にとっては忘れ得ぬ想い出の品よ。いずれ息子に嫁が来たら与えようと大切にしまっていた。古いものだが、質の良い玉ゆえ、傷つけぬようにな」
「お義母上さま―」
香花は潤んだ瞳で妙鈴を見つめた。
〝いずれ息子に嫁が来たら与えようと―〟、そのひと言が心の奥底に触れ、優しい気持ちを呼びさましてゆく。
「ありがとうございます。お義母上さまの大切なお品、生命に代えても大切にいたします」
