
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
その夜は満月だった。
香花は光王の室の窓を細く開き、そこから見える月を見上げている。
丁度、月光が窓の傍に植わった早咲きの桜を鮮やかに照らし出していた。月の光に濡れた薄紅色の八重桜はどこか妖しい魅力を放つ女のように艶めかしい。
「そんなに熱心に何を見てるんだ?」
机に向かって書見をしていた光王が立ち上がり、傍にやってきた。
「ほら、見て。月が凄くきれい」
「そうだな」
光王は気のない口調で相槌を打つ。
「女ってヤツは、どうして月だとか花だとか、そんなものに夢中になって歓ぶんだ?」
しきりに首をひねっている。
「あっ」
突如として大声を出した香花を、彼がジロリと一瞥した。
香花は光王の室の窓を細く開き、そこから見える月を見上げている。
丁度、月光が窓の傍に植わった早咲きの桜を鮮やかに照らし出していた。月の光に濡れた薄紅色の八重桜はどこか妖しい魅力を放つ女のように艶めかしい。
「そんなに熱心に何を見てるんだ?」
机に向かって書見をしていた光王が立ち上がり、傍にやってきた。
「ほら、見て。月が凄くきれい」
「そうだな」
光王は気のない口調で相槌を打つ。
「女ってヤツは、どうして月だとか花だとか、そんなものに夢中になって歓ぶんだ?」
しきりに首をひねっている。
「あっ」
突如として大声を出した香花を、彼がジロリと一瞥した。
