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私と目があった。
時間が止まった。しんとした世界が私を包み込む。
でも彼は何事も無かったかのように、まるで目など合ってなどいないかのように、自然にそらした。
自然に。そらしたとになるのかも、分からないくらい。自然に。
何かに裏切られるような感覚が私の中に入ってくる。
私も必死の表情を動かさずに彼の前を通りすぎた。

「ねえ、啓？もしかしてさ。啓がティーに誘った子ってさっきの子？」
いきなり浴すんだ佐藤君の声が後ろでした。
さっきまでガヤガヤとしていた廊下は、今は佐藤君と大浦君の二人とその横を通り過ぎた私だけだった。
妙にこの廊下は声が響きやすい。いつも思ってる事が頭をよぎる。
でも、どうして佐藤君は私だと思ったのだろう。
通り過ぎる時の顔に出てしまったのだろうか。
「ふーん、そうなんだ」
また、後ろで佐藤くんの声が聞こえた。
その意味深な物言いに耐えられなくて、振り返った。
後ろには、顔をあからさまに背けた大浦君と、こっちを見て心底面白そうに、にやついた佐藤君が私の方を見ていた。
「名前なんて言うの？」
間を置かずに佐藤君が口を開いた。私の事を観察するように、
私はいつの間にかチーターに追われる鹿のような心境になっていた。