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アルカナの抄 時の息吹

第8章 「世界」正位置

目覚ましの音に、ぼんやりと目を開けた。…朝か。出勤しなきゃ。

むくりと起きて、顔を洗い、朝食にシリアルを食べ、着替え、鏡に向かって顔を作る。すべてを淡々とこなし、自宅を出た。

地下鉄に揺られながら、少しうとうととする。ちなみに、念のためアラームがかけてあるので万が一眠り込んでしまったとしても問題ない。


気づけば、あたしは城の廊下を歩いていた。人はまったくいないし、暗いし、静まり返っている。と、どこかの部屋の前で立ち止まる。

…どこだろう。この扉、知ってるような…。

扉を開ける時に、ちら、と視界に入った手は――あたしのものではなかった。そして廊下と同じほど薄暗いそこは、知らない部屋だった。

…ああ、また。“何か”見てるのね。

よくある、夢だと自覚しながら見る夢ってヤツ。それを見ていた。

その陰鬱な部屋を出る。…あれ、あたし…何か握ってる。…銃だ!しかも、この銃。知ってる…前にも見た。

彼を、撃ったときのものだ。


ブブ、というバイブ音で目を覚ます。そこには、つり革、握り手、他の乗客――何の変哲もない地下鉄の中の一風景。ありきたりな日常。いつもの世界。

…まさかね。

それにしてもリアルで、不思議な夢だった。こんな風に、一つに繋がったストーリーを何度も夢に見ることって、よくあることなのだろうか。

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