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アルカナの抄 時の息吹

第8章 「世界」正位置

仕事を終えて会社から最寄り駅まで歩く間も、ずっとそのことを考えていた。地下鉄に乗る。この時間帯は学生と被り、そこそこ人が多いのだが、行きと同じようにまた座ることができた。

うつらうつらとし始め、一瞬意識が飛ぶ。ちら、と何かが脳裏に映る。交互に、二つの映像。

ひとつは…農村のような場所。農村、で連想するようなのどかなところではなく、やつれた村人たちが、畑を耕している。

もうひとつは…銃を持った人。あたしの部屋から出ていく。その方向は――。

――待って。まさか…ダメ。ダメよ、そっちに行っては…!――ああ…そうよ、これは夢。早く――早く夢から覚めて――!!


と、電車の揺れでガクンと頭が下がった拍子に、ぱち、と目が覚めた。

よかった…嫌な夢だった。

そう思ったとき、ふとスーツのポケットに手をやった。何かが入っている…。取り出すと、それは。


月のペンダント…!


あの世界でのことは、夢じゃない。ペンダントはそう告げている気がした。

行かなきゃ。

直感。どうやってかは考えていなかった。ただ、気づけば向かっていたのだ――あのBARに。

いつものカウンター席に座る。

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