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アルカナの抄 時の息吹

第8章 「世界」正位置

散々暴れて、急にむなしくなってやめた。ヒトの姿に戻り、寝室に引き返す。もう、誰にも会いたくなかった。心配して誰かが会いに来ても、俺はマキと会う前の乱暴な口調で追い返してしまった。

やる気が起きない。手紙を拾い、ベッドに仰向けに倒れ込む。寝転がりながら、マキの字を読み返す。

『あなたにとっても、あたしにとっても、良くない』…か。

どう良くないのか…多分もう、自分でもわかってる。どうすればいいのかも自ずと見えた。

むくりと起き上がる。…俺は。


俺は、ヴェルテクス国王だ。


感情を抑えきれず、龍になって癇癪を起こすのは、子どものすること。そんなのはもうやめだ。

「…ハース!そこにいるな?」
王は扉に向かって呼び掛けた。

「おります」
廊下に控えていたハースが答える。王は重臣たちを国王の間へ呼ぶよう命じ、そこで緊急会議が開かれた。

会議の後は、昼食も取らず、執務室に籠って報告書や上奏文に目を通した。今はヴェルテクスのことだけを考えよう。目下、この国に必要なのは、領土拡大により乱れた内政の刷新。

やるべきことは山ほどあった。そうして無心に取り組むうち、時は飛ぶように過ぎていく。

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