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アルカナの抄 時の息吹

第8章 「世界」正位置

ガロウが危ない。助けなきゃ。そう強く思っていたからか、嫌な夢を見た。正夢にならないことを願いながら、教会を出る。

目覚めたら、この教会にいたのだ。この世界で最後にいたのが、ここだったからだろう。夜が明けるまでこのままいようかとも思ったが、やはりガロウが心配だった。

だから…走った。少しでも早く、彼のもとへ。

固い地面を踏みしめる。スーツのまま。明かりのない町中を駆けていく。河まであと、半分か。

自分の体力の無さを呪いたい。息が上がり、棒のようにつりはじめた足を止めてしまいたくなる。立ち止まってはダメ。たぶん。

走る。走る。

河が見えてきた。よし、この河を越えれば、3分の2は走ったことになる。そう思いながら走っていると、夜闇が揺らいだように見えた。

……ん?

気のせいだろうか、と橋を渡っていると、遠くに誰かが立っている。

ああ…嘘。もしかして。

足の動きが、鈍くなっていく。ゆっくりと、ゆっくりと。最後には歩き始める。

視線の先に、意識は完全に奪われていた。はあ、はあ、と呼吸を整えながら、確かめるように近づいていく。

「ガ、ロウ…?」

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