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アルカナの抄 時の息吹

第8章 「世界」正位置

相手も、ゆっくりと近づいてくる。歩きながら、じっと目を凝らす。

涙が、流れ落ちた。押し殺していた感情が溢れ出す。ああ…やっぱりあたし。

「ガロウ…!」
彼の胸に飛び込む。温かい。

――あなたを、愛してる。隠したって、ごまかしたって。だめなの。一度心に宿った強い想いは簡単にはなくせない。

「…マキ」
ガロウはあたしを抱き締めながら、ふっと笑った。

「……っ、それ…」
肩が濡れている。…生暖かい、液体で。

「おまえを迎えに行こうと思って部屋を出たら、銃を持った男に出くわしてな。偶然似た夢を見ていたから、間一髪で避けられた。これはかすっただけだ」
ガロウは穏やかに言った。多分、エランを撃ったやつと同じだ、捕縛したから安心しろ、とも。

「あたしも、その夢を見たわ。だから、教会から走ってきたの」

「そうか。やはり、おまえが救ってくれたんだな。そうだと思った」
そう言い、ふ、とやわらかく笑む。細めた目は、感情に飲まれない強さを秘めていた。国王としての強さを、いつのまにかガロウは得ていた。

「…よく、ここがわかったわね」

「おまえを感じたんだ。なぜだろうな、疑いはなかった」

「愛の力?」
くすりと言うと、ガロウも、そうかもしれないなと笑う。

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