アルカナの抄 時の息吹
第1章 「魔術師」正位置
「わかったから、気色の悪い声を出すな」
ほらよ、と王が自分のグラスを差し出した。
「やったあ」
酒だ~、とグラスに口をつける。大きめのグラスだったが、みるみるうちに空になっていく。
「どこが一口だ」
聞いてあきれる、とすっかりなくなったグラスを受け取り、王が言った。
「あたし、結構お酒強いのよ。…勝負してみる?」
挑戦的に言うと、“勝負”という言葉に反応した王は、すぐに引き受けた。
「じゃあ、グラスを持ってきてもらわなきゃ」
王のグラスは特注で一つしかなかったため、同じグラスを二つ用意させ、乾杯、と飲み比べを始めた。
しばらくして、どうなったかというと…まだ飲んでいた。…ただし、あたし一人で。
「…あたしの勝ちね」
王の寝顔に呟いた。王つきの侍女に知らせると、さらに人を呼び王を私室まで運んでいった。
「あたしもほどよく酔ってきたみたい。眠くなってきちゃったな…」
ふああ、と伸びをすると、自分も与えられた自室へと戻っていった。
「今日も元気に労働労働!」
翌朝、いつもの調子で起きてしまい、朝早くから掃除に勤しんでいた。…出勤なんてないのに。
夢、というわずかな可能性に今さらながらかけていたが、目が覚めてもやはりここにいたのだから…。
「遅刻はなくても、労働はあるのよね」
はあ、とため息をついた時、どこからか怒声が聞こえてきた。
ほらよ、と王が自分のグラスを差し出した。
「やったあ」
酒だ~、とグラスに口をつける。大きめのグラスだったが、みるみるうちに空になっていく。
「どこが一口だ」
聞いてあきれる、とすっかりなくなったグラスを受け取り、王が言った。
「あたし、結構お酒強いのよ。…勝負してみる?」
挑戦的に言うと、“勝負”という言葉に反応した王は、すぐに引き受けた。
「じゃあ、グラスを持ってきてもらわなきゃ」
王のグラスは特注で一つしかなかったため、同じグラスを二つ用意させ、乾杯、と飲み比べを始めた。
しばらくして、どうなったかというと…まだ飲んでいた。…ただし、あたし一人で。
「…あたしの勝ちね」
王の寝顔に呟いた。王つきの侍女に知らせると、さらに人を呼び王を私室まで運んでいった。
「あたしもほどよく酔ってきたみたい。眠くなってきちゃったな…」
ふああ、と伸びをすると、自分も与えられた自室へと戻っていった。
「今日も元気に労働労働!」
翌朝、いつもの調子で起きてしまい、朝早くから掃除に勤しんでいた。…出勤なんてないのに。
夢、というわずかな可能性に今さらながらかけていたが、目が覚めてもやはりここにいたのだから…。
「遅刻はなくても、労働はあるのよね」
はあ、とため息をついた時、どこからか怒声が聞こえてきた。