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アルカナの抄 時の息吹

第1章 「魔術師」正位置

「遅い!!早くしろ、ノロマ!!」


城の中からのようだ。窓から、少年が同じ年頃の少女に叱りつけているのが見えた。年齢は変わらなそうだが、着ている衣服などから、二人の身分の差が一目でよくわかる。

「…申し訳ありません」
ボロボロの服を着た少女は、頭を下げた。

「ホントに使えないな!グズ」
所々に刺繍のあしらった、格調高い絹服を着た少年が口悪く言った。少女は、頭を下げたまま黙っている。

「…もういい。下がれ」
少年がそう言うと、少女は一礼し、行ってしまった。


…うわあ。嫌なもん見ちゃったわ。

どんな世界よ、ここ…と再び作業に戻った。





昼食をとりに城へ戻ると、ちょうど起きてきたらしい王に会った。

「“おはようございます”、王さま」
皮肉のこもった挨拶をした。営業スマイルで。

国王っていいわね。あたしなんか朝っぱらから労働だったわよ。

「おはよう」
二日酔いで頭がガンガンしているのを押し隠し、王は皮肉を無視して挨拶し返した。いつも通りに見える王にあたしは、意外とやるわね、とだけ思った。

「さっきメイドの子が、同じくらいの歳の子に罵声浴びせられてたわよ。いくらなんでもあれは言い過ぎだと思うわ」

「メイド?」

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