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アルカナの抄 時の息吹

第1章 「魔術師」正位置

「まだ小さいのに、ボロボロの服着せられてた」

「…ああ、奴隷か」

「…奴隷?奴隷なんているの?」

平等を愛する現代では、めったに聞かない単語だ。奴隷なんているの、と蔑んで言ったのだが、王は気づかずに淡々としている。

「ヴェルテクスに戦争で負けた国の者だな。属国になったりもするが、土地がヴェルテクスのものになれば、住むところや働き口をなくしてそうなる」

表情一つ変えずそんなことを言う王に、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。

「なによそれ。戦争に負けたからって、人間じゃないみたいな扱い受けるの?」

「弱い者は強い者に従う。力の強さこそがそいつの価値。当前だろ」
頭痛の波が再び襲い、王は若干顔をしかめて言った。そんなことを知らないあたしには、めんどくさそうに言ったように見えた。

…うちの会社みたいな考え方。

「…最低ね」
不愉快そうに言い残し、去っていく。


「なんなんだ…?」
小さくなっていく後ろ姿を見ながら、王は頭痛に耐えつつぼやいた。

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