アルカナの抄 時の息吹
第1章 「魔術師」正位置
「陛下の御髪は深く、美しく、真の黒だ。お前の安っぽい黒髪とは違う」
憤慨しながらハースが言った。へえ、と返したが、正直違いはわからなかった。
「そんなことより、おまえはしっかり掃除しろ。陛下はお優しいから配分はおまえの自由と仰っていたが、甘えるな。自分の身分を忘れずきちんと働け。そして早く出ていけ」
自分の急ぎの用事を思い出したハースが、一気にまくし立てた。
「わかりましたー。すぐにやりまーす」
やる気なんてまったくなかったが、めんどうなのでそう言っておいた。それは正解だったようで、ハースはそのまま、早足で行ってしまった。
「陛下、お加減はいかがですか」
氷水に布を浸すハース。
「最悪だ。頭がガンガンする」
久しぶりにあんなに飲んだからな、と呟く。しかも、勝負に負けた。
だが今思えば、あの女にうまく乗せられたような気もしないでもない。
「失礼します」
ハースが、絞った布を王の額に当てた。
「ああ…」
冷たさに、痛みが紛れる。しばらく当てていると、冷たさは次第になくなっていき、また布を氷水に浸しては、絞って額に当てる、というのを繰り返した。
憤慨しながらハースが言った。へえ、と返したが、正直違いはわからなかった。
「そんなことより、おまえはしっかり掃除しろ。陛下はお優しいから配分はおまえの自由と仰っていたが、甘えるな。自分の身分を忘れずきちんと働け。そして早く出ていけ」
自分の急ぎの用事を思い出したハースが、一気にまくし立てた。
「わかりましたー。すぐにやりまーす」
やる気なんてまったくなかったが、めんどうなのでそう言っておいた。それは正解だったようで、ハースはそのまま、早足で行ってしまった。
「陛下、お加減はいかがですか」
氷水に布を浸すハース。
「最悪だ。頭がガンガンする」
久しぶりにあんなに飲んだからな、と呟く。しかも、勝負に負けた。
だが今思えば、あの女にうまく乗せられたような気もしないでもない。
「失礼します」
ハースが、絞った布を王の額に当てた。
「ああ…」
冷たさに、痛みが紛れる。しばらく当てていると、冷たさは次第になくなっていき、また布を氷水に浸しては、絞って額に当てる、というのを繰り返した。