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アルカナの抄 時の息吹

第1章 「魔術師」正位置

何度か繰り返したのち、もう大丈夫だ、とハースを下がらせた。まだ痛みは残っていたが、吐き気はもうほとんどないし、だいぶ楽になった。

棚の上に置いてあった地図を広げる。次はどこを攻めようか…。王はニヤニヤしながら自国と周辺の白い国々を眺めていた。

と、そこへ、再びハースがやってきた。

「…陛下」
微妙な顔でハースが口を開いた。だが言葉はそこで途切れ、言いづらそうに口をもごもごさせている。…朗報ではないらしい。中々言い出さないハースに、なんだ、と促す。

「――早ければ明日、北へ遠征に出ていた部隊が全員帰還するそうです」
恐る恐るハースが告げると、王はあからさまに嫌な顔をした。

「…あいつが帰ってくるのか」
先ほどまでの上機嫌はどこへやら、王は眉をひそめた。最悪だ、頭痛もぶり返してきた気がする…と無意識にこめかみに手を当てる。

「陛下…」

「もう下がっていいぞ」
背を向けた王に、ハースは口をつぐみ、退いた。





窓から降る光に、王は目を開けた。どうやら朝らしい。あれからそのままベッドに倒れ込み、ふて寝したようだ。

相変わらず気分は最悪だった。身体的な意味ではない。あいつが帰ってくる時は、いつもこんな風に最低な気分だった。顔を合わせずに済むなら、どんなにいいか。

顔を洗って嫌な気分を払拭させようと、身を起こす。眉間にしわを寄せつつも、王は部屋を出た。

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