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アルカナの抄 時の息吹

第1章 「魔術師」正位置

「今日も働いたわ~」
そして収穫はゼロ。肩を落としながら歩いていると、どこからか声が聞こえてきた。

「次はここを攻める!」
どこか無邪気で自信も感じられるその声は、王の私室からのようだ。扉をわずかに開け、のぞき込む。

「ほう。この国ですか。ここなら資源も豊富ですし、手に入れればヴェルテクスもさらに豊かになるでしょうな」

「そうだろう。ヴェルテクスの今の勢いなら、この国にも余裕で勝てるはずだ」

「して、策は?」

「まあ、これくらい兵を送れば十分だろう」
王は四本の指を立てた。

策は、と聞かれて、兵を送れば十分って、どういうことよ!

「…4万ですか?」

「4000だ」

「ええ!」
ハースはすっとんきょうな声をあげた。

「…大丈夫ですか?」
顔色をうかがいながら、恐る恐る聞く。

「ヴェルテクスの兵士なら大丈夫だ!…たぶん。大丈夫じゃなかったらまた送ればいい」

なっ…!

「なによそれ!」
たまらず、あたしは扉を開けて二人の前に躍り出た。

「なんだお前は」

「こやつ、盗み聞きしていたのか!今すぐ出ていけ!」

「ちょっと、あんたね!また送ればいいって、兵士の命を何だと思ってるのよ!」

「仕方ないだろう。戦い、力が及ばねば散りゆく。それが兵士だ」

まるで兵士は使い捨て、と言っているようだ。ますますうちの会社の考え方に似てる…気にくわない!

はぁ、と深くため息をつく。

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