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アルカナの抄 時の息吹

第1章 「魔術師」正位置

それでも食い下がれば、森野さんあなたね、と始まり、スムーズな人間関係と快適な職場がどうたらこうたら、社会人のマナーがどうたらこうたらと“ありがたい”説法。

結局、半強制的に出席することになり、ご祝儀もしっかり相場額払うことになった。

いつもそうよ。どんなときも使えない部下扱い。自分のやり方とか考え方が正しいと思ってる。それを押しつけてくるのよ。

森野さん、これはこうやってって言ったでしょ。森野さん、聞いてるの。森野さん、森野さん、森野さん。

あーあー!!

「…まぁまぁ。お客さんも、結婚したら会社の人からもらえますから。素直に祝ってあげましょうよ」
雲行きの怪しくなってきた彼女を、BARのマスターがなだめる。

「イヤよ!…あらしはねぇ、ひろり暮らしれ、お金も時間もないなか、いろいろやりくりしれんのよ!!今月らっれピンチらっらから、お酒もガマンしれらのに!!会っらころもないひろを、祝えるわけないじゃないのよっ!!」

…かなり酔っているようだ。完全に自己を見失っている。彼女は酒には強い方だったのだが、ここまで酔うとは珍しい。

「お金ないけろ、もう知らない!今日は飲んれやる!!っれいうか、経費れ落ろしらいくらいよ!落ちるわよね?落ちれろう然よね!…あ、そうら。上司にるケればいいんら」
思いついたように言うと、そうしようそうしよう、と一人納得し始めた。

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