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アルカナの抄 時の息吹

第1章 「魔術師」正位置

「何何何なになになにッ!?誰よあんた!!」

「おまえこそなんなんだ、どこの侍女だ!!」

「侍女ってなによ!!違うわよ!!」

「じゃあ奴隷か!確かに侍女にしては品がないな…勝手に俺の部屋に入るとはどういうつもりだ、主人からしつけられなかったのか!!」

「失礼ね!っていうかここのどこがあんたの部屋…あれ?」

周りの様子がおかしいことに、今さら気づく。そこは、あのBARなどではなく、やけに広い、見知らぬ部屋の中だった。自分が寝ていたのは大きなベッドだし、異国風の…屋敷の一室だろうか。

「――ここどこ…?あんた誰?」
その瞬間、急に男の表情が険しくなる。

「おまえ…――この城の者じゃないな?」
眉を寄せ、睨み付ける。

「暗殺に来たか。どこの刺客だ?どうやって入った?」
どこから取り出したのか、短剣を喉元に突きつけながら低い声で言った。

「刺客じゃないわよ!どうやって入ったって…あたしだって知らないわよ!気づいたらここにいたんだから!!」

「なんだそれは!」

「わかんないわよ!なんなのよ…どこなのよここっ!?家に帰して!!」
ぎゃあぎゃあわめくのに対し、逆に冷静になったのか、男は、はあ、とため息をついた。

「…まぁこんな間抜けな暗殺者もいないか。頭も悪そうだし。いいだろう。ここがどこか、教えてやる」
そう言うと、フン、と口角を上げる。

「もはや知らぬ者などいないだろう。ここは、今この世界で最も勢いのある――あのヴェルテクス王国だ!」

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