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アルカナの抄 時の息吹

第3章 「運命の輪」逆位置

それから数日後、敵国から書状が届いた。それは、降伏を表明するものだった。最終兵器である大砲を失い、兵力のみの戦いは不利だと考えたのだろう。王はこれを受け入れる旨をすぐ相手国に伝えた。

ヴェルテクスは勝った。

…けど。ハースから聞き、これを知った後も、あたしの心はなんとなく晴れなかった。戦争が終わることについては、もちろん嬉しい。だが、そうではない。心を支配しているのは、別のことだった。

王とはもう、ほとんどまともに会話していなかった。顔を会わせても気まずく、次第に互いを避けるようになっていた。庭の掃除中も、最近はもっぱら一人だった。

…だめだ。だめだ、このままじゃ。

「こんなの、あたしらしくない」

言いたいことがあったら、はっきり言うのがあたし。思うようにやるのがあたしよ。


掃除を終え、王の私室へと向かう。静かな扉を、三回ノックする。

「誰だ」
中から王の声。

「あたし」

「…何か用か」

「話したいことがあるの。…入るわよ」
中へ入ると、正装の王が背を向けて立っていた。

「…話って何だ」

「謝りに来たの。…この前は言いすぎたわ。ごめんなさい」

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