テキストサイズ

アルカナの抄 時の息吹

第4章 「月」逆位置

初代もそうだが、二代目国王は領土の拡大よりも、内務に関する事業を熱心に執り行っている。だが、他国に遅れを取らぬよう軍事強化を進めたり、資源入手のため御自ら剣を取り周辺国へ侵略するなど、猛き一面も持っている。

今、国に何が必要か、何をすべきかを見極める目と、実行する力を併せ持つ、優れた王だったようだ。

しかし、それにしても。

「…どういうことなの」
あの金髪の青年は、自らをレクザムと名乗った。先代国王と同じ名を。これは、単なる偶然なのか。


パタン、と本を閉じると、窓の外を見つめた。暮れなずむ空を見れば、王を思い出した。

そういえば…あの時も、苦しそうな顔してた。

時折辛そうな顔を見せる王。それに最初に気づいたのは、共に月を眺めたあの夜だった。王は、何に苦しみ、もがいているのだろう。

王についてほとんど無知なあたしには、それを推し量ることはできない。だが、暗闇の中でうずくまる彼を救い出せるのは、多分自分だけだ…なぜか、強くそう思っていた。

…だからまずは。

すっくと立ち上がると、あたしは部屋を出た。向かう先は、決めていない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ