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アルカナの抄 時の息吹

第4章 「月」逆位置

というか、決めようがなかった。彼が普段どこにいるのか、あたしは知らない。だが、案外容易く、その姿を見つけることができた。

「ねえ」

あたしに気づいたようだ。振り向いた金髪が揺れる。そこは、王が近づくなと言った部屋の付近だった。

「ん?」

「話があるわ。今、時間あるかしら?」

「大丈夫だよ」

「じゃあ、書庫に来てちょうだい」
なるべく人に聞かれず、静かに話せる場所を選び、青年を呼び出す。青年は素直に応じた。


そして、書庫。

「何かな?話って」
青年は、いつもの笑みをたたえて言った。

「レクザム」
その名を呼んだとき、なんとなく、彼の顔が一瞬陰った気がした。

「あなたの名前じゃないわね?」

「…僕の名だよ」

「先代の王と同じ名前だけど、これは偶然?」

「偶然だ」

「…本当に?」
疑わしげにもう一度聞く。青年は、うなずく。

「もしくは、名君にあやかりたいと、両親が同じ名をつけたのかもしれないね」
変わらず微笑み続ける彼に、あたしは少し違和感を覚え始めていた。

これは…何かある。

だが、青年はそのことについて、話す気はないらしい。…ならば。

「…わかった。じゃあそれはもういい。だけど、王さまのことについては教えて」

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