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アルカナの抄 時の息吹

第4章 「月」逆位置

「同じことだよ、それじゃ」
青年は、くすくす笑った。

「……え?」

「陛下のことを話すのは、僕のことを話すのとほとんど変わらないから」

さっぱり訳がわからない。

「どういうこと…?」
たまらず聞いた。だが、青年は首を振る。

「これ以上は…やめておくよ」
そう言ったきり、口を閉ざしてしまった。…仕方ない。





「ウェハースさん」
ポンポン、と肩を叩くと、ハースは般若の面で振り返った。

「“ハース様”!」
眉をつり上げて憤慨する。もはや見慣れたハースの表情だった。

「ウェハース様、聞きたいことがあるんですけど」
手招きして近くの部屋に入り、話を切り出した。

「…何だ」

「若い金髪の子いるでしょ?兵士の。王さまとあんまり仲良くないみたいだけど、二人はどういう関係なの?」
言った途端、ハースの顔つきが変わった。

「あいつとはあまり話すな。…特に陛下の前では、絶対にな」
ものすごい剣幕で忠告するハースに、もうやりましたとは口が裂けても言えなかった。で、誰なの?という顔をすると、ハースは一瞬押し黙る。

「…陛下の義弟だ。私の甥でもある」

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