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アルカナの抄 時の息吹

第4章 「月」逆位置

兄弟…?義理の?
ということは…片親が違うのね。

「じゃあ、別の質問。奥のあの部屋は、誰の部屋なんですか?近づくなって言われたんですけど」
あたしの言葉に、ハースの表情がさらに曇る。

「あれは…二人の母君――大妃の部屋だ」

“二人の”…。そっか、お母さんが同じなのね。

「…こういう話は、陛下が好まれない。もうするな」

「あと一つだけ」

「いや、ダメだ。私も話しすぎた」
ハースは口をつぐむ。その意思は固いようだ。もうしゃべらんぞ、としか言わなくなったハースに、がっくりと肩を落とす。

まあ、でも…これだけ教えてもらえれば十分か。

それ以上は食い下がらず、あたしは礼を告げてハースと別れた。





その夜は、少し冷え込んでいた。雲がかった月を、窓から見る。

「おぼろ月…キレイね」
だけど、なぜだか少し怖い。そんな気持ちを打ち消すように、ベッドへと潜り込み、目を閉じる。

あたしは…彼に、何をしてあげられるだろう。

答えを出せぬまま、眠りについた。机の上には、開かれたままの本が置いてあった。


その時、実は扉の外に王がいた。ノックをしようと構えたところで、ふ、と腕を下ろす。

王はそのまま扉を背にし、自分の部屋へ戻っていった。

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