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アルカナの抄 時の息吹

第4章 「月」逆位置

その晩、あたしは夢を見た。すごく悲しい夢を。

黒髪の少年が、誰かを待っている。隣で手を握る母親は、不安げな様子で、今にも泣き崩れそうな顔をしている。彼女の栗毛は、少し痛んでいるようだった。

彼らが見つめる黄昏の彼方から、人影が近づいてくる。甲冑に身を包んだその人は、二人の前に膝まずくと、重々しく口を開く。

母親は顔を両手で覆い、慟哭する。少年が言葉をかけ伸ばした手を、彼女は強く振り払った。


少年が泣いている。


少年が、男を部屋に連れ込む母親を、切なげな目で見つめている。


少し成長した少年が、意を決したように開けた扉の先には。


金髪の少年と口づけを交わす、母親、が…――。


そこで、はっと目が覚めた。ひどく汗をかいていることに気づく。

今のは…何?

悲しくて、つらくて、せつなくて、どうしようもなく、苦しい夢。

少年は…昔の王さま?

どうして、こんな夢を。

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