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アルカナの抄 時の息吹

第4章 「月」逆位置

死にたくなければそれ以上知るな、知ろうとするな、という王の脅し。あたしは、すっと息を吸い、短く吐いた。

「殺したければ、殺せばいい」
自分でも驚くほど落ち着いた声だった。

「それで、気がすむなら。そのとてつもなく重い枷から、あんたが抜け出せるのなら」

「殺せばいいわ」
射抜くような目でそう言うと、目を閉じて顎をあげ、首をさらけ出す。

やがて、覆い被さっていた影がふっと消え、あたしは目を開けた。王だったそれは、いなくなっていた。静かに立ち上がると、近くにいたらしいハースと目があった。

「愚か者」
ハースがため息をつく。

「…確かに愚かね」
目を伏せ、細く笑う。だけど、これがあたし。あたしのやり方。

さて、とドレスの裾を払う。王さまったら荒々しい余興が好きなんだから大変だわ!と大声で言うと、時が止まったように静かだった会場に、少しだけ声が戻った。

会場にはさらに人が集まり、最終的には5000人もの人で溢れた。ワインやタンドリーチキン、大きなケーキなども用意された、豪華な立食パーティーだった。椅子も少し用意されてはいるが、ほとんど使われていない。

こんなに豪華な食事を食べる機会なんて少ないのに、あたしはなんだか落ち着かず、始まってまもなく、その場を離れた。

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