アルカナの抄 時の息吹
第4章 「月」逆位置
静かな城に戻る。自分の部屋の前に立つが、扉に伸ばした手を引っ込めた。
王の部屋。気づけばここへ足を運んでいた。珍しく開け放たれた扉から中を覗き込むと、ベッドに座り込む王の後ろ姿が見えた。
「なんであんなことを言った」
呟くようにそう言った王の表情は見えない。気のせいか、髪が少し伸びている気がする。
「…あたしにも、わからない。だけど」
「どうしてかしら。それで本当に、あんたが苦しみから解かれるのなら…この命、あげてもいいと思えるの」
一呼吸置いて言う。
お互い、どこか考えあぐねながら話しているようだった。少しだけベッドに近づくが、王は何の反応も示さない。
「…おまえに」
唐突に口を開く王。
「これをやる」
やっと王が少し顔をあげた。真剣な目の奥には、深い悲しみが垣間見えた気がした。そしてやはり、わずかに髪が伸びている。差し出された物に目をやると、月のペンダントだった。
「これは…?」
戸惑いながら受けとる。そして、裏側の龍の紋章に気づく。
あれ…これって。
「母親からもらった最後のものだ」
「え……」
「父親から贈られたものらしい。それを俺に渡した時のあの人は、まだ俺の“母親”だった」
王は立ち上がり、窓の外を眺めながら、ゆっくりと話し始める。
王の部屋。気づけばここへ足を運んでいた。珍しく開け放たれた扉から中を覗き込むと、ベッドに座り込む王の後ろ姿が見えた。
「なんであんなことを言った」
呟くようにそう言った王の表情は見えない。気のせいか、髪が少し伸びている気がする。
「…あたしにも、わからない。だけど」
「どうしてかしら。それで本当に、あんたが苦しみから解かれるのなら…この命、あげてもいいと思えるの」
一呼吸置いて言う。
お互い、どこか考えあぐねながら話しているようだった。少しだけベッドに近づくが、王は何の反応も示さない。
「…おまえに」
唐突に口を開く王。
「これをやる」
やっと王が少し顔をあげた。真剣な目の奥には、深い悲しみが垣間見えた気がした。そしてやはり、わずかに髪が伸びている。差し出された物に目をやると、月のペンダントだった。
「これは…?」
戸惑いながら受けとる。そして、裏側の龍の紋章に気づく。
あれ…これって。
「母親からもらった最後のものだ」
「え……」
「父親から贈られたものらしい。それを俺に渡した時のあの人は、まだ俺の“母親”だった」
王は立ち上がり、窓の外を眺めながら、ゆっくりと話し始める。