アルカナの抄 時の息吹
第5章 「恋人」正位置
「もう一度始めから、こっちを向いて全部言ってみて。誰と、何をしたいの?」
もはや、悪魔のようだった。ニヤニヤと意地悪く笑み、王に詰め寄る。王は口を真一文字に結び、バッとこちらを振り返った。
「キスしたい!マキ!!おまえとっ!!」
何かに耐えるように歯を食いしばり、叫んだ。王の顔は、ゆでだこのように真っ赤だ。
「よろしい」
ふっと笑うと、一歩近づいて王の首の後ろに両腕を回す。少しだけ背伸びして顔を近づけると、そっと目を閉じて唇を重ねた。
吐息を、舌を、唾液を絡め合う。そこが、人目につく可能性の大いにある場所だということは、王にはもう、どうでもよかった。周囲など関係ないほどに、うますぎるキスにメロメロだった。
与えれば、さらに求めてくる。どんどん深みにはまっていく。息が上がる。溺れて、いく。
……と。ふいに、唇が離れる。
「!?」
突然断たれた快楽に、うろたえる王。
「おしまい。また今度ね」
どうしたんだ、と言いかけた王の言葉を遮るように言った。
「な、なんでだ」
「なんでもよ」
「もう一度言えばいいのか?」
「もう一度言ってもだめ」
即答すると、王は顔をしかめた。
「マ、マキ…」
「また今度ね、ガロウ」
すがるように見つめてくる王をかわし、壁に立て掛けていたほうきを手にする。
「う……」
王は、しばらく納得できないようだったが、わかった、とやがて帰っていった。
もはや、悪魔のようだった。ニヤニヤと意地悪く笑み、王に詰め寄る。王は口を真一文字に結び、バッとこちらを振り返った。
「キスしたい!マキ!!おまえとっ!!」
何かに耐えるように歯を食いしばり、叫んだ。王の顔は、ゆでだこのように真っ赤だ。
「よろしい」
ふっと笑うと、一歩近づいて王の首の後ろに両腕を回す。少しだけ背伸びして顔を近づけると、そっと目を閉じて唇を重ねた。
吐息を、舌を、唾液を絡め合う。そこが、人目につく可能性の大いにある場所だということは、王にはもう、どうでもよかった。周囲など関係ないほどに、うますぎるキスにメロメロだった。
与えれば、さらに求めてくる。どんどん深みにはまっていく。息が上がる。溺れて、いく。
……と。ふいに、唇が離れる。
「!?」
突然断たれた快楽に、うろたえる王。
「おしまい。また今度ね」
どうしたんだ、と言いかけた王の言葉を遮るように言った。
「な、なんでだ」
「なんでもよ」
「もう一度言えばいいのか?」
「もう一度言ってもだめ」
即答すると、王は顔をしかめた。
「マ、マキ…」
「また今度ね、ガロウ」
すがるように見つめてくる王をかわし、壁に立て掛けていたほうきを手にする。
「う……」
王は、しばらく納得できないようだったが、わかった、とやがて帰っていった。