アルカナの抄 時の息吹
第6章 「戦車」逆位置
「今日も行こう。あの場所へ」
急にくるりと振り向き、笑みを作った王が明るく言った。かと思うと、前へ向き直してあたしの手をとり、引っ張っていく。
「わっ」
「今すぐ始めよう。二人だけのお茶会だ」
「ちょっと待っ…」
「走るぞ」
そう言った時には、もう走り出していた。
「ええええ」
慌てて倣うが、何分こちらはスカートだ。走りにくいったらない。空いた手でスカートを持ち上げながら、必死に王についていった。
おかしいと思い始めたのは、それからさらに数日経ってからだった。王は、なにかとあたしを呼びつけた。側に置いた。滅多なことがなければあたしから離れようとしない。まるで監視のようだった。
「…ねえ」
我慢の限界だった。王の監視は、ここ何日かは特にエスカレートしている。就寝時ですら、自分の部屋へあたしを呼んで共に寝ようとしたり、あたしの部屋に押し掛けてきては横で寝息をたて始める。
王は常時、一緒にいたがった。まるで誰かをあたしに近づけさせまいとしているかのように。
「ん?」
一人の時間が、ほしい。
「前にあたしが言ったこと、覚えてる?」
王の目を見つめる。
急にくるりと振り向き、笑みを作った王が明るく言った。かと思うと、前へ向き直してあたしの手をとり、引っ張っていく。
「わっ」
「今すぐ始めよう。二人だけのお茶会だ」
「ちょっと待っ…」
「走るぞ」
そう言った時には、もう走り出していた。
「ええええ」
慌てて倣うが、何分こちらはスカートだ。走りにくいったらない。空いた手でスカートを持ち上げながら、必死に王についていった。
おかしいと思い始めたのは、それからさらに数日経ってからだった。王は、なにかとあたしを呼びつけた。側に置いた。滅多なことがなければあたしから離れようとしない。まるで監視のようだった。
「…ねえ」
我慢の限界だった。王の監視は、ここ何日かは特にエスカレートしている。就寝時ですら、自分の部屋へあたしを呼んで共に寝ようとしたり、あたしの部屋に押し掛けてきては横で寝息をたて始める。
王は常時、一緒にいたがった。まるで誰かをあたしに近づけさせまいとしているかのように。
「ん?」
一人の時間が、ほしい。
「前にあたしが言ったこと、覚えてる?」
王の目を見つめる。