テキストサイズ

アルカナの抄 時の息吹

第7章 「審判」逆位置

「まあとにかく、要は一人にならなきゃ良いんでしょ?」

「ん…多分」

「じゃあガロウじゃなくても、誰かといさえすれば良いんじゃないの?」

「いや…できれば俺といた方が…」

「愛の力?」

王はあたしの顔色をうかがいながら、控えめにうなずく。

「離れていたら、あたしを愛することはできない?」

「そんなことはない!」
王は一転して急に力強く言った。

「じゃあ、常にあなたの側にいなくたって、大丈夫ね」

「う……」

「一人にはならないから。必ず誰かとはいる。約束する」
諭すように言うと、じゃあねと部屋を出た。あたしの部屋に一人残された王も、しばらくしてからのそのそと移動した。





翌日明け方。早くに目が覚めてしまったあたしは、そろそろと扉を引き開ける。顔を出し、周りに誰も――というか王がいないのを確認。

…よし。今だ。

音をたてないよう慎重に、かつ速やかに扉を閉め、ほっと短く息をこぼす。

…昨日のこと。あれから王は、あたしの行くところすべてに、コソコソと隠れてついてきた。あれでは本当に“監視”だ。自由を好むあたしには、息がつまる。

「どこに行くの?」
急に飛び込んできた声に、ビクリと振り向く。と、あの青年だった。

「ああ…びっくりした。…ちょっと庭にでも行こうと思ってね」

「そうなんだ。僕も行こうかな」

事情を知っている彼。きっと、あたしを一人にしないためだろう。一度断ろうと思ったが、王との約束もあるため、そうね行きましょう、と了承した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ