アルカナの抄 時の息吹
第7章 「審判」逆位置
どこだ…どこだ。“あの人”は、見ればすぐわかると言った。そして“女”と一緒にいると。
策は失敗したが、あいつを直接叩けばあるいは。優劣を覆すチャンスはめぐってくるかもしれない――いや、祖国の勝利は確実だ。
今度は、しくじってはならない。失敗は許されない。すべては俺の腕にかかっている。
…と、その時。彼は見つけた。まだ明けきっていない空の下、城から出ていく男女。
こちらの姿を見られてはまずい。彼は低木の陰に隠れて様子をうかがう。この明るさと距離では、向こうに彼は見えない。だが彼の鍛えられた目をもってすれば、こちらから相手の姿をとらえるのは容易だった。
何もかもはっきりと見える。この前の女と…一緒にいるこの男は。視線を順に移し、しっかり観察していく。金髪…格調高い衣服…そして、端々に気品の漂う所作。
男の鋭い目が次にとらえたのは。首もとに光る、龍の刻まれた銀ボタン。
…見つけた。
右手に握られた、固いものを目の前へ持ってくると、左手を添える。勝手が違うが、こちらも訓練を受けており、なかなかの腕前だ。絶対に外さない自信があった。
必ず、当てる。
彼の目がさらに鋭くとがる。照準が合わせられていく――。
パァン、と破裂音が響いた。
策は失敗したが、あいつを直接叩けばあるいは。優劣を覆すチャンスはめぐってくるかもしれない――いや、祖国の勝利は確実だ。
今度は、しくじってはならない。失敗は許されない。すべては俺の腕にかかっている。
…と、その時。彼は見つけた。まだ明けきっていない空の下、城から出ていく男女。
こちらの姿を見られてはまずい。彼は低木の陰に隠れて様子をうかがう。この明るさと距離では、向こうに彼は見えない。だが彼の鍛えられた目をもってすれば、こちらから相手の姿をとらえるのは容易だった。
何もかもはっきりと見える。この前の女と…一緒にいるこの男は。視線を順に移し、しっかり観察していく。金髪…格調高い衣服…そして、端々に気品の漂う所作。
男の鋭い目が次にとらえたのは。首もとに光る、龍の刻まれた銀ボタン。
…見つけた。
右手に握られた、固いものを目の前へ持ってくると、左手を添える。勝手が違うが、こちらも訓練を受けており、なかなかの腕前だ。絶対に外さない自信があった。
必ず、当てる。
彼の目がさらに鋭くとがる。照準が合わせられていく――。
パァン、と破裂音が響いた。