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サンタとトナカイ、天使と私
第3章 青年
「おおー、いいな。行きましょう」
「やったあ! 東京のクリスマスってむっちゃキラッキラしてそうで見てみたかってん!」
無邪気な高校生に押されるように外に連れ出された。夜は肌が切れるように寒い。
高校生の三人はマフラーや手袋をつけてはいるけれど、学ランは暖かそうに見えなかった。それでも、寒さなど感じないようにはしゃぎまくる様子が若さを感じさせた。
「レイさん、寒くないですか?」
雅くんが隣りに来た。私の顔を見ずに真っすぐ向いたまま聞く。
「うん、大丈夫よ」
「この髭つけます? むっちゃ暖かくなりますよ」
私は頭を上げて雅くんの顔を見た。
「ええ! その髭つけて出て来たの?」
「へへ、おもろいかなって思って。どうですか?」
雅くんの綺麗な顔に似合わない真っ白なもじゃもじゃの髭が口周りを隠して、顎から首の下まで垂れさがっていた。
「あはははっ、はははっ」
私はその可笑しな光景にお腹を抱えて笑いだしてしまった。
雅くんはわざと髭を揺らしてもっと笑わせようとしてきた。周りを歩くカップルたちが少し驚いたような顔をして通り過ぎていく。
「もお、雅くん。面白すぎるんだから」
私はそう言って髭をべりべりと取ってやると、持っていた小さめのバッグに詰め込んだ。
「でも、こんなのつけてたらせっかくの男前が台無しよ。もうこれは没収ね」
「レイさんが……」
髭を取った雅くんの顔は部屋の中で見たときより男らしく見えた。年下の男の子にドキッとしてしまった。
「私がなに?」
「なんか、悲しそうな顔してはったから……笑わせたろって思って」
「え……」
私は笑顔でいたつもりだったのに、雅くんを心配させていたなんて。
雅くんは黙って、私の手をとった。雅くんの手は大きくて私の手袋をつけた手をすっぽりと覆った。
「指、霜焼けになりかけやったし。これで温くなりますよ」
料理した後少し指がじんじんとかじかんだままだった。よく観察してくれていた雅くんの優しさが心に染みた。
「で、でもこんなとこ彼女に見られたら泣かれちゃうわよ」
私は誤魔化すように笑って手を解く。
「彼女なんておらんから、大丈夫です」
雅くんは一歩も引こうとしない。若さ故の真っすぐな眼差しが私に突き刺さる。胸が苦しい。
「じゃあ、好きな女の子に見られちゃうかも」
「もう見られてます」
「じゃあ、だめじゃない」
「やったあ! 東京のクリスマスってむっちゃキラッキラしてそうで見てみたかってん!」
無邪気な高校生に押されるように外に連れ出された。夜は肌が切れるように寒い。
高校生の三人はマフラーや手袋をつけてはいるけれど、学ランは暖かそうに見えなかった。それでも、寒さなど感じないようにはしゃぎまくる様子が若さを感じさせた。
「レイさん、寒くないですか?」
雅くんが隣りに来た。私の顔を見ずに真っすぐ向いたまま聞く。
「うん、大丈夫よ」
「この髭つけます? むっちゃ暖かくなりますよ」
私は頭を上げて雅くんの顔を見た。
「ええ! その髭つけて出て来たの?」
「へへ、おもろいかなって思って。どうですか?」
雅くんの綺麗な顔に似合わない真っ白なもじゃもじゃの髭が口周りを隠して、顎から首の下まで垂れさがっていた。
「あはははっ、はははっ」
私はその可笑しな光景にお腹を抱えて笑いだしてしまった。
雅くんはわざと髭を揺らしてもっと笑わせようとしてきた。周りを歩くカップルたちが少し驚いたような顔をして通り過ぎていく。
「もお、雅くん。面白すぎるんだから」
私はそう言って髭をべりべりと取ってやると、持っていた小さめのバッグに詰め込んだ。
「でも、こんなのつけてたらせっかくの男前が台無しよ。もうこれは没収ね」
「レイさんが……」
髭を取った雅くんの顔は部屋の中で見たときより男らしく見えた。年下の男の子にドキッとしてしまった。
「私がなに?」
「なんか、悲しそうな顔してはったから……笑わせたろって思って」
「え……」
私は笑顔でいたつもりだったのに、雅くんを心配させていたなんて。
雅くんは黙って、私の手をとった。雅くんの手は大きくて私の手袋をつけた手をすっぽりと覆った。
「指、霜焼けになりかけやったし。これで温くなりますよ」
料理した後少し指がじんじんとかじかんだままだった。よく観察してくれていた雅くんの優しさが心に染みた。
「で、でもこんなとこ彼女に見られたら泣かれちゃうわよ」
私は誤魔化すように笑って手を解く。
「彼女なんておらんから、大丈夫です」
雅くんは一歩も引こうとしない。若さ故の真っすぐな眼差しが私に突き刺さる。胸が苦しい。
「じゃあ、好きな女の子に見られちゃうかも」
「もう見られてます」
「じゃあ、だめじゃない」
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