
サンタとトナカイ、天使と私
第4章 王子
ラルフさんがそんなことを真面目な表情のままで言う。何を言っているのだろう。
雅くんは不敵な笑みを浮かべた。その顔にどこか見覚えがある気がした。
「でも、先を越されてしまったみたいだ。クリスマスにデートなんてね」
「早いもん勝ちです」
「言ったね?」
「言いました」
勝手に話を進める二人にどうしていいか分からない私はおろおろするしかない。
一人でいても人目をひくような男が二人で言い合いをしていれば当然目立つわけで、立ち止まって凝視する人までいる。
一人は日本男児を最大限に美しくした学ラン姿の高校生、もう一方は海外の映画に出てきそうな白い肌で緑がかった青い瞳の王子様。そして、小さな私。
神様はとことん不公平だ。
「ラルフさん!」
二人の睨みあいを止めるために間に入った。
「どうしたの?」
穏やかで大人なラルフさんに戻っていた。
「何か用事があったんじゃないですか? 急がなくてもいいんですか?」
「レイの家に行こうと思ってたんだ」
「え?」
「レイに伝えたいことがあって……」
薫さんからもうすでに聞いている、と言いたくなった。私はただのオトモダチ。もう分かっているから何も聞きたくない。
「結構です。私は何も聞く必要ないんです。お仕事で面倒をかけたりすると思いますが、よろしくお願いします。これからは社外で会うのはやめましょう」
きっぱりと言うと胸のつっかえが取れたようにすっきりした。ヤケになっているのかもしれない。
「雅くん、行くわよ。もうそろそろ帰らなきゃお家の方も心配するわ」
「え、あ……はい」
「もう足の指が凍っちゃいそう」
自分でも驚くほど平気な言葉が次々と出て来た。私って性根がすごく悪いのかもしれない。神父さんに癒してもらった心が一気に汚れてしまった。
「レイ」
ラルフさんの小さな呟きに雅くんは固まった。私は気付かないふりをした。
「ほら、雅くん行こう。ラルフさん、失礼します」
丁寧に頭を下げて挨拶をしたが、ラルフさんは棒のように突っ立ったままだった。
自分から伝えたかったのに、私から言われて驚いているのだろうか。でも、もうそんなことどうだっていい。
雅くんを半ば引きずるようにして来た道を引き返そうとした。
「レイ!!」
私も雅くんも振り返らない。
雅くんは不敵な笑みを浮かべた。その顔にどこか見覚えがある気がした。
「でも、先を越されてしまったみたいだ。クリスマスにデートなんてね」
「早いもん勝ちです」
「言ったね?」
「言いました」
勝手に話を進める二人にどうしていいか分からない私はおろおろするしかない。
一人でいても人目をひくような男が二人で言い合いをしていれば当然目立つわけで、立ち止まって凝視する人までいる。
一人は日本男児を最大限に美しくした学ラン姿の高校生、もう一方は海外の映画に出てきそうな白い肌で緑がかった青い瞳の王子様。そして、小さな私。
神様はとことん不公平だ。
「ラルフさん!」
二人の睨みあいを止めるために間に入った。
「どうしたの?」
穏やかで大人なラルフさんに戻っていた。
「何か用事があったんじゃないですか? 急がなくてもいいんですか?」
「レイの家に行こうと思ってたんだ」
「え?」
「レイに伝えたいことがあって……」
薫さんからもうすでに聞いている、と言いたくなった。私はただのオトモダチ。もう分かっているから何も聞きたくない。
「結構です。私は何も聞く必要ないんです。お仕事で面倒をかけたりすると思いますが、よろしくお願いします。これからは社外で会うのはやめましょう」
きっぱりと言うと胸のつっかえが取れたようにすっきりした。ヤケになっているのかもしれない。
「雅くん、行くわよ。もうそろそろ帰らなきゃお家の方も心配するわ」
「え、あ……はい」
「もう足の指が凍っちゃいそう」
自分でも驚くほど平気な言葉が次々と出て来た。私って性根がすごく悪いのかもしれない。神父さんに癒してもらった心が一気に汚れてしまった。
「レイ」
ラルフさんの小さな呟きに雅くんは固まった。私は気付かないふりをした。
「ほら、雅くん行こう。ラルフさん、失礼します」
丁寧に頭を下げて挨拶をしたが、ラルフさんは棒のように突っ立ったままだった。
自分から伝えたかったのに、私から言われて驚いているのだろうか。でも、もうそんなことどうだっていい。
雅くんを半ば引きずるようにして来た道を引き返そうとした。
「レイ!!」
私も雅くんも振り返らない。
