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サンタとトナカイ、天使と私
第4章 王子
信じられない重いでラルフさんを見てから、ブレスレットに目を移す。
真ん中に優しい青色をした大きめのサファイアと、その周りに百合をイメージしたモチーフが模られていた。よく見覚えのあるものだった。
「ごめん。きっと、気味が悪いと思ってるだろうね」
私は会社の帰り道に通り過ぎるショーウインドウに静かに座っていたこのブレスレットを毎日のように眺めていた。一目で気に入ってからはなにかに取り憑かれたように目が釘付けになってしまうのだった。
しかし、その美しさに見合う値段の桁を心の中で数えると私には手の届かないものだと諦めていた。
「見てたんですか?」
「何度か、ね」
穴があったら入りたい、とはこういうことを言うのだろう。
ラルフさんが息を吐くと、私のコートの袖をまくって手首を出した。
肌に触れたシルバーがひんやりと冷たかったが、それすら喜びに感じた。
「うん、すごく似合うよ」
「本当に頂いていいんですか?」
「もちろん。レイのために作ったものなんだから」
立ち上がったラルフさんは今さらながらすごく大きかった。
「レイ。これからも社外で会ってほしい」
暗闇で見上げるふたつの瞳は青く輝いていた。外のイルミネーションのせいかもしれない。
「でも、薫さんが……」
「悪いけれど、彼女には興味が全くないんだ。彼女が君に何を言ったかは知らないけれど、僕を信じてほしい」
私が言いかけるとラルフさんがさっと言葉をかぶせた。
私は薫さんの言動の全てを理解すると、怒りよりも安堵が溢れ出した。
「よか……った」
手袋をつけていない手で涙を拭えばたちまち赤みがかった皮膚がひりひりと痛み出す。
ラルフさんは黙って自分の灰色の手袋をはずすと、大きな手のひらで私の手を包んだ。
「僕のお願い、聞いてくれるね?」
これからは社外で会いたくないなんてさっき言った自分はとんでもないほら吹きで強がりだ。
「はい。ありがとう、ございます」
ラルフさんは私の答えを聞くと端整な顔をしわくちゃにして笑うと私を身体ごと抱きしめた。
初めて包まれたラルフさんの香りはとても落ち着かされた。
真ん中に優しい青色をした大きめのサファイアと、その周りに百合をイメージしたモチーフが模られていた。よく見覚えのあるものだった。
「ごめん。きっと、気味が悪いと思ってるだろうね」
私は会社の帰り道に通り過ぎるショーウインドウに静かに座っていたこのブレスレットを毎日のように眺めていた。一目で気に入ってからはなにかに取り憑かれたように目が釘付けになってしまうのだった。
しかし、その美しさに見合う値段の桁を心の中で数えると私には手の届かないものだと諦めていた。
「見てたんですか?」
「何度か、ね」
穴があったら入りたい、とはこういうことを言うのだろう。
ラルフさんが息を吐くと、私のコートの袖をまくって手首を出した。
肌に触れたシルバーがひんやりと冷たかったが、それすら喜びに感じた。
「うん、すごく似合うよ」
「本当に頂いていいんですか?」
「もちろん。レイのために作ったものなんだから」
立ち上がったラルフさんは今さらながらすごく大きかった。
「レイ。これからも社外で会ってほしい」
暗闇で見上げるふたつの瞳は青く輝いていた。外のイルミネーションのせいかもしれない。
「でも、薫さんが……」
「悪いけれど、彼女には興味が全くないんだ。彼女が君に何を言ったかは知らないけれど、僕を信じてほしい」
私が言いかけるとラルフさんがさっと言葉をかぶせた。
私は薫さんの言動の全てを理解すると、怒りよりも安堵が溢れ出した。
「よか……った」
手袋をつけていない手で涙を拭えばたちまち赤みがかった皮膚がひりひりと痛み出す。
ラルフさんは黙って自分の灰色の手袋をはずすと、大きな手のひらで私の手を包んだ。
「僕のお願い、聞いてくれるね?」
これからは社外で会いたくないなんてさっき言った自分はとんでもないほら吹きで強がりだ。
「はい。ありがとう、ございます」
ラルフさんは私の答えを聞くと端整な顔をしわくちゃにして笑うと私を身体ごと抱きしめた。
初めて包まれたラルフさんの香りはとても落ち着かされた。
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