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サンタとトナカイ、天使と私
第1章 美女
私はラルフさんに憧れていた。それもずっと前から。
でも、どこに行っても女性に囲まれる彼が私を見てくれるはずはないと思って諦めていた。群がる女の子たちを遠目に見て、あんなにはしゃげるなんてすごいななんて思っていた。
と、同時に羨ましくもあった。
可愛らしい同僚たちや美しい先輩たちが彼の周りにたくさんいるだけで素敵な光景だ。私は彼の周りに人だかりができている間、ひとり黙々とパソコンに向き合いながら自分の性分を恨めしく思ったりもした。
私が入社して半年経った時、ラルフさんが私に声をかけた。
私は会議に必要な書類を急いで印刷している時で、彼は印刷室にひょっこりと姿を現したのだ。
いつも他の重役たちと話し合いをしたり部下に指示を出しているラルフさんがコピー機だらけの部屋に入ってくる光景は不思議なものだった。
「どうされましたか?」
「ああ、えっと……」
「なんでしょう?」
身長の低い私がラルフさんを見上げると、ぽりぽりと頭を掻いているラルフさんが目にはいった。
彼らしくない狼狽した様子になにかあったのかと心配になった。
「お疲れ様です。レイさん」
少し訛りはあるが流暢な日本語で私にそう言うと背中を向けて部屋を出て行った。
残された私はしばらく入口の扉を見つめていた。
仕事を言いつけに来たのではなかったのか。わざわざお疲れ様を言いに、あのラルフさんが?
いや、そんなはずないきっと入る部屋を間違えたのだろう。だから驚いたような顔をしていたのだ。
でもラルフさんが私の名前を知っていてくれたことを疑問に思うと同時に嬉しかった。
初めての彼との会話はその短く内容があまりにないものだった。それからラルフさんが月に一回のペースで日本に来るたび人のいないところで話す機会が自然とできた。
そのうち、社外でも是非会いたいという申し出を受け、少し躊躇ったものの一緒に夕食を食べたり夜景を見に行ったりした。
ただ微妙な距離を保ったままラルフさんと並んで歩く。そんなことしかしなかったけれど、私の心はデートを重ねる度に彼で占められていった。
彼が何を考えているのかは全く分からなかったけれど、いつも紳士な彼が時折無邪気な子供のようにはしゃぐ姿や笑う顔を見ているだけで幸せだった。
でも、どこに行っても女性に囲まれる彼が私を見てくれるはずはないと思って諦めていた。群がる女の子たちを遠目に見て、あんなにはしゃげるなんてすごいななんて思っていた。
と、同時に羨ましくもあった。
可愛らしい同僚たちや美しい先輩たちが彼の周りにたくさんいるだけで素敵な光景だ。私は彼の周りに人だかりができている間、ひとり黙々とパソコンに向き合いながら自分の性分を恨めしく思ったりもした。
私が入社して半年経った時、ラルフさんが私に声をかけた。
私は会議に必要な書類を急いで印刷している時で、彼は印刷室にひょっこりと姿を現したのだ。
いつも他の重役たちと話し合いをしたり部下に指示を出しているラルフさんがコピー機だらけの部屋に入ってくる光景は不思議なものだった。
「どうされましたか?」
「ああ、えっと……」
「なんでしょう?」
身長の低い私がラルフさんを見上げると、ぽりぽりと頭を掻いているラルフさんが目にはいった。
彼らしくない狼狽した様子になにかあったのかと心配になった。
「お疲れ様です。レイさん」
少し訛りはあるが流暢な日本語で私にそう言うと背中を向けて部屋を出て行った。
残された私はしばらく入口の扉を見つめていた。
仕事を言いつけに来たのではなかったのか。わざわざお疲れ様を言いに、あのラルフさんが?
いや、そんなはずないきっと入る部屋を間違えたのだろう。だから驚いたような顔をしていたのだ。
でもラルフさんが私の名前を知っていてくれたことを疑問に思うと同時に嬉しかった。
初めての彼との会話はその短く内容があまりにないものだった。それからラルフさんが月に一回のペースで日本に来るたび人のいないところで話す機会が自然とできた。
そのうち、社外でも是非会いたいという申し出を受け、少し躊躇ったものの一緒に夕食を食べたり夜景を見に行ったりした。
ただ微妙な距離を保ったままラルフさんと並んで歩く。そんなことしかしなかったけれど、私の心はデートを重ねる度に彼で占められていった。
彼が何を考えているのかは全く分からなかったけれど、いつも紳士な彼が時折無邪気な子供のようにはしゃぐ姿や笑う顔を見ているだけで幸せだった。
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