恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
俺の声が出なくなったのは2週間前のこと。
その更に2週間前、知らない女が家に来て、母さんに怒鳴り散らしていった。
父さんと別れろ、って。
よくよく聞いてみたらなんてことはない。
父さんの浮気相手だった。
その日から家庭は無茶苦茶で、父さんと母さんは喧嘩ばかり。
毎晩毎晩、口喧嘩をしていた。
お前がいけないんだとか、信頼を裏切られたとか、あんたなんか死んでしまえとか…
聞いていて痛かった。
殴られちゃいないけれど、精神的に辛かった。
ついこの間まで、笑い合っていた二人がこうも変わってしまうなんて…
嫌で嫌で仕方がなかった。
涙こそ流さなかったが、毎晩布団の中で耳を塞ぎながら心で泣いていた。
でも更に辛いことが続いた。
姉さんが事故で死んだんだ。